Rotating phantom

Phantom objects

Flowers Phantom

物体を回転させる。
回転によって物体はそのものの機能や意味性から離れ、あるひとつの回転体として立ち上がってくる。あるいは、表面上の意味から離れ、より純粋で本質的な意味を帯びるかもしれない。
 地球は23.9345時間の自転周期で自転している。そして、365.25636日で太陽の周りを公転する。さらに、太陽系は約2億2600万年かけて銀河系内を公転する。
私達は常に回転する世界に生きているのだ。
 透明度を増した回転する物体がカメラファインダー越しに闇に浮かぶ様子は、遠い宇宙の彼方へ向けた天体観測を思わせた。

日本では古くから“モノ”には神が宿ると言われてきました。九十九神といわれる日本の民間信仰では、長い年月を経た道具や生き物などの“モノ”には神や霊魂が宿るとする、アニミズム的世界観が見られます。
現代において、“モノ”に対する価値観も大量生産・大量消費の資本主義経済のなか、信仰と結びついた“モノ”から物質としての“物”に在り方を急激に変化させてきました。その変化の中で人の“モノ”に神を視る感覚は衰え、私たちはただ当たり前のように大量生産された安価な“物”を無自覚に消費しつづけてきたように思います。
 
 私は「Rotating phantom」のシリーズでもう一度、“物”を“モノ”として復活させることはできないかと考えます。
「Rotating phantom」は手軽に手に入れることのできる安価な製品を回転させ、シャッタースピードを調節したカメラで撮影をすることで制作されます。そのとき、“物”はモーターの高速回転運動によって本来の機能や意味性から離れて浮遊します。視覚的にも半透明性を纏った“物”はその絶えることのない運動のなかで“物”としての存在感を失い、中間的な存在となった“物”は“モノ”としてもう一度立ち上がることになります。中間的な存在とは人と神の中間領域に存在する曖昧な状態を言います。古い日本の民間信仰やネイティブアメリカンの間ではその状態にいたることで神と繋がることができるとされているそうです。
 
 回転によって“物”が“モノ”へと変貌をとげる…。そこには説明のいらない美しさがあります。色は空間と解け合い、形は回転運動のなかに収拾され、暗闇に浮かぶその姿は宇宙空間に浮かぶ惑星のようです。
それは現代における新たな神の姿とも言えるかもしれません。

YAZU Yoshitaka

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