「Horror」
2009
サイズ可変
扇風機、蛍光灯、ストロボライト、木の枝、石、木材、布、他
映画館の廃墟にて展示。座席の取り払われた天井高7mの劇場の中央に浮かぶように展示した。
中心に据えられた扇風機は取り囲んだ布のカーテンを不規則に揺らし、切れかけの蛍光灯は明滅する。ストロボライトは雷のように閃光を放ち、枝はギシギシとしなっている。その姿は幽霊船が劇場の中を彷徨っているようだ。
Horror(恐怖)をキーワードに光や音、風、といった現象を扱ったインスタレーション。 私(1980年生まれ)と同世代の作家の共有する感覚のひとつに、見えざるものの存在を肯定する感覚、もしくは現実とは別 の並行世界を承認する感覚があるように思います。そういった感覚から、近代的な宗教の枠組みとは離れたところで自ら信
仰のよりどころを設定するような行為が生まれてきているのではないかと私は考えます。それはある種のプリミティブな神の 再誕であるとも捉えられます。現代の環境における神の誕生があるとするならば、それはどんなものでしょうか? この展示では、ホラー映画的恐怖描写から新たな神の姿を現出させることを試みました。
日本のホラー映画や小説には日常の何気ない現象が“見えない何か”の気配を感じさせたり、直接的ではない間接的描写 によって恐怖感を表現する手法があります。「ホラー映画における恐怖を誘発させる為の仕掛けが、日本や東南アジアの土 着的信仰に見られる神を迎えるための儀式に近い構造を持っているのではないか?」という仮説を軸に作品を展開します。
展示室内に設置された作品の様々な仕掛けにより起こる“何かが起こる気配”はホラー映画の要素を抽出したものですが、 同時に気配によって訪れを告げる来訪神のありようにも重なります。 このインスタレーションを通して観者に、場に現れる“見えざるもの”の気配を感じさせられればと思います。